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blogで書いたくすぐり小説、ここで合体ひとまとめ。探す手間が省けます。

!!18歳になっていない人は見ちゃダメ!!

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触手×夏美(ケロロ)

時計は彼女が期待するほど、早くはその針を進めてくれない。

いつも以上にゆっくりと時を刻むように感じる時計を恨めしく思いながら、夏美は両腕を体に強く押しつけて、必死にある衝動を堪え続けていた。

強く歯を食いしばり、何とか気を紛らわそうと教科書に目を落とすが、その行為が気休めにすらならないことを、彼女自身が一番良く知っている。

誰かに相談することもできず、そこから立ち上がり、逃げ出すこともできない。

ただ、夏美は全身を襲う、ある刺激に残りの十数分の間、耐え続けなくてはならない。

 

(どうして……どうして、私がこんな目に……!)

 

額から汗が流れ、今にも吹き出しそうな「笑い」の衝動を必死に押し殺しながら、何とか周囲のクラスメイトには悟られまいと、ただ耐え続ける。

洋服の下、素肌の上で、得体の知れない何かがうごめく感触。

それが、彼女の洋服に隠された部分で、絶えることなく続けられている。

 

7月の暑い盛り、薄い制服の下にまんべんなく広がったそれは、彼女の肌に、ある妖しい刺激を送り込み続けていた。

 

クーラーが申し訳程度に効いた室内は、決して居心地の良い場所とは言えない。

体を硬くして、何とかその「何か」の動きを封じ込めようとするが、それはできそうになかった。

かろうじて、腕を必死に閉じることで、脇の下への刺激は最低限に抑え込んでいるが、

それでも、脇の下の肌の上を覆う「それ」は、その僅かな隙間を利用してムニュムニュと動き、彼女に我慢できない刺激を送り込んでくる。

 

「……っ…くふっ…!」

 

机につっ伏して、漏れ出した笑いを隠そうとするが、それも、そろそろ限界に達しようとしている。

脇腹で縦横無尽に動き回る細い触手が、残酷なほどに皮膚に押し込まれてグリグリと動き回る。

 

「…くはっ……!」

 

へその中にまで広がったそれは、1つ1つの溝の中でヒダのようにサワサワとはためくように動いている。

彼女が、まだかろうじて我慢できているのは、その動きが、まだ激しい物ではないからだけに他ならない。

夏美は、今日の朝からの経験の中で、この得体の知れない生物が、自分の声に反応して動くことを知っていた。

黙っていさえすれば、激しい動きにはならず、何とか……かろうじて耐えることができる。

そして、この生物が汗や体液を好むことも、そして、大体の正体も掴んでいる。

ただ、唯一にして最大の問題は、この生物を体からどうやって引き離すべきか、その手段が分からないことだった。

 

(……くっ…ボケガエルめ……)

 

そう思いながらも、彼女は、現在我が身に起きている異変が自ら招いた結果であることを知っていた。

今にも飲み込まれてしまいそうな刺激の波の中で、夏美は今朝のできごとを思い出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

プシュー

 

ハンガーにかかった制服に、夏美は右手にもった消臭剤をスプレーする。

先日、空になったとばかり思っていた消臭剤、しかし、その重さから、容器の中には液体がたっぷり入っていることが分かる。

冬樹が買ってきてくれたのかと思いながら、丹念に、汗をかきそうな場所へ、スプレーしていく。

 

念入りなスプレーを終えて、ふと窓から広がる空を見上げる。

微かに春の面持ちを残しながらも、彼方にはもくもくと大きな入道雲が立ちのぼり、いよいよ夏本番といったところ。

今年は地球温暖化という言葉が何度も叫ばれているが、それを裏付けるように太陽が、早朝だと言うのに、じりじりと地面を焼くように輝いていた。

 

パジャマを脱ぎ、下着を着替えた夏美は、洗い立ての制服に袖を通す。

ひんやりとして柔らかい布地が肌の上を滑る。

スカートを両足にくぐらせ、スクールバックの中に教科書と宿題も入れて準備万端。

 

さて、朝ご飯を食べて冬樹と登校しようかと、ドアのノブに手をかけた彼女は、1階からドタバタと騒がしい音が響いてくるのに気づいて、軽く苦笑いする。

 

「……ほんと、あいつらは元気よね」

 

ポツリとつぶやくと、ドアを開いて廊下へ足を踏み出した。

 

 

 

階段を下り、リビングに入ると、ケロロとギロロが慌ただしく部屋中を駆け回っている。

一体何事かと、興味津々の冬樹は、マグカップに入った牛乳に口を付けながら、左手で焼きたてのトーストに手を伸ばしている。

 

「おはよう冬樹」

 

「あ、ねーちゃんおはよう」

 

椅子にに座った彼女は、焼きたてのトーストに手を伸ばし、パクリと頬張りながら、騒がしく駆け回る二人の異星人の姿を目で追っていた。

 

「ねえ、冬樹?」

「ん?」

 

トーストを大きな口に押し込みながら、冬樹が小首を傾げる。

 

「……なんかあったの?アレ…」

 

なぜか、窓の前に置かれたアロエの鉢植えの下まで確認しているケロロに、じっとりとした視線を送りながら尋ねる。

冬樹は「なんか、器を探してるんだって」と、かぶりを振ると再びパンに食いついた。

 

「な、な、な、夏美どの!」

 

アロエの鉢植えを水受けに戻したケロロは、夏美に気づくとトコトコと歩み寄ってきて、テーブルの上に飛び乗ると、ズイと顔を近づけてくる。

目が血走り、いつも以上に大きく目を見開いた顔は不気味だった。

 

「なっ!?」

 

「夏美どの!テーブルの上にあった、これぐらいのプラスティックの器を知らないでありますか!?」

 

彼は、そう言うと、指先でその器の大きさを示す。

夏美は、そのぐらいの大きさのプラスティックの器の存在を知っていた。

 

(……私の消臭剤だ……)

 

「そ、そんなの知らないわよ……」

 

空だったと思っていた容器に、たっぷりと詰め替えられた液体。

一抹の不安を感じながらも、それを、制服にスプレーしちゃいました、などと言えるはずもない。

まして、彼らが血眼になって探している容器が、自室のベッドの上にあると分かったら、一体何を始めるか分かったものではない。

それに、またよからぬことに使うに決まっている。

自分は、地球の未来を救うためにウソをついているんだ、と思うと、少しだけ罪悪感が薄らいだような気がした。

 

「そ…そうでありますか……」

 

がっくりと肩を落として、ケロロはピョンと床に飛び降りる。

 

「その器がどうしたのよ」

 

自分の制服にスプレーした液体が、何か強力な毒薬だったりしたらかなわない。

あまり聞きたくない質問だったが、彼女はケロロの哀愁漂う背中に、そう質問を投げかける。

 

「常態液状低知性活動体であります……」

「…えき……ちせい?」

 

百科事典の片隅にも載っていなさそうな聞き慣れない単語。

しかし、名前の響きだけからすると、何やら恐るべき物質のような気がする。

 

「液体の状態で生きている、特別な生物のことだ」

 

トコトコとギロロが夏美の前に歩み出る。

 

「…へ、へぇ……」

 

よく分からないが、とにかく、何か地球外の物であることだけは間違いないようだった。

 

「その、液体の生き物を、あんたたちはどうするつもりだったのよ……」

 

また、それを使って地球侵略を企てようとしていたのだとしたら、聞き捨てならない。

お仕置きが必要だと心の中で思いながら、ギロロの目をキッと睨む。

 

「安心しろ夏美。それを使って、俺たちは別に地球侵略をしようなどとは思っていない」

「……ふーん。じゃあ、何に使うつもりだったの?」

「常態液状低知性活動体は、その形を自在に変えたり、堅さや色を変化させることができる、特別な生命体だ。

まあ、俺も、そんな物を一体何に使おうとしていたのかは分からないが……」

 

そう言いながら、ギロロはケロロを見る。

ケロロはそんな彼の視線になど気づく様子もなく、ソファの後ろやテレビの裏側に器用に入り込んで、その器を探していた。

 

「…で、それって何か人間に害とかあるの?」

 

一番気になっていた質問をする。

明日になったら、全身がただれていた、なんてことになったら洒落にもならない。

 

「特にはない。ただ」

「ただ……?」

「そんな物が街をドロドロとかけずり回っている姿は、あまり見た目が良いとは言えないだろうな」

「あー……」

「なお、常態液状低知性活動体は音に反応する。そして、主に薄い塩分と水分を好む性質があるようだ。

非常に低い知性を持った無害な生物だが、見かけたら、とりあえず用心するに越したことはないだろう」

 

 

 

キーンコーンカーンコーン

 

1時限目の終了を告げるチャイムの音。

机に伏して、荒い呼吸を繰り返していた彼女には、チャイムの音が天女の美しい歌声にも勝るとも劣らない、甘美な音色となって届いていた。

 

「……はあ……はあっ……くひっ!」

 

油断していると、体のどこかから僅かな刺激。

気を抜いていると、笑い声が漏れ出してしまいそうになる。

 

ガラガラと引き戸が閉まる音が聞こえ、ザワザワと教室が騒がしくなりつつあった。

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……くっ……はぁ……」

 

廊下を進む足取りは重く、両腕を胴に強く押し当てていないと、体を動かすことすらままならない。

授業が終わり、騒がしくなりつつあった教室、数人のクラスメイトが彼女のことを心配して歩み寄って来るが、夏美は気丈に振る舞うことはできなかった。

ヨロヨロとして力の入らない足で、一歩一歩、登下校口へ向かう。

 

小雪に、自分が早退することを先生に伝えて欲しいと告げるだけで精一杯だった彼女は、

できるだけ体を動かさないよう……汗をかかないように、慎重に自宅を目指して歩いていく。

体を動かすだけで、皮膚を覆っている粘液が、小刻みに震える。

 

「くひっ……ひはっ!」

 

焦る気持ちが災いして、少しでも早足になろうものなら、その動きに反応するのだろうか。

『それ』は、彼女の体に耐え難い刺激を送り込んでくる。

背中に貼り付いている物は、コリコリと背骨に沿って皮膚をもてあそぶように刺激し、

脇腹に貼り付いている物は、彼女が歩く度にグニュグニュとうごめいて、強引に笑いを引きだそうとする。

 

「……くぅっ……ひっ……くくっ……」

 

腹部に貼り付いた物は、少しでも彼女が笑いを漏らすと、もぞもぞと、まるで波打つように動き、さらに強い笑いを要求する。

その度に彼女は足を止めて、何とか自分の中からわき起こり噴出しようとする「笑い」を抑え込もうと呼吸を整えなくてはいけない。

 

「ふぅ……くっ……うぷっ!……ふぅ……ふぅ……」

 

できるだけ動きが少ない効率的な歩き方。

それを研究開発しながらの帰路は恐ろしく長い。

しかし、彼女はただ自宅へ戻り、ケロロに事の次第を話した上で、何とか『それ』を取り除いてもらうしか他に方法がない。

汗をかかぬように、できるだけ動きが少ないように努めるが、それでも、くすぐられながら真夏の廊下を歩くと、自然と汗がにじみ出して来る。

自分の体温を調節するために大切な発汗という代謝を、夏美は初めて心の底から呪っていた。

 

「ひはっ!……くっ…くひひっ……!」

 

脇の下の中では、にじむ汗に反応して『それ』がモニョモニョとうごめいて、薄く柔らかな皮膚を、これでもかと刺激する。

 

「…くぁッ!……ふぎぃっ!……わ…ワキは……!」

 

まるで、強く閉じられた脇の下の奥で、小さな指先が無数に動いているような感覚に、壁に体を寄せて必死に耐える。

ここで笑ったら、きっと、学校中の人たちが集まって来る。

そして、自分の気が触れたのだと思われてしまう。

 

激しい羞恥心と、今すぐにでも笑って楽になってしまいたいという気持ちがせめぎ合い、それでも、彼女は笑いを堪えて、再び歩き始めた。

 

階段を下ろうとしても、1段1段丁寧に降りなくてはならない。

少しでも足の角度を誤れば、足の裏に貼り付いている『それ』がグニュリと動いて、指の間でブルブルと震える。

 

「……きひっ!……くはっ……そ、そこはッ……!」

 

足を階段の上に置いて、再び上げてゆっくりと降ろし直す。

ほんの十数段のはずの階段が、まるで目の前に奈落を見せる、そこが見えない崖のようにすら思えてしまう。

途中、何度も諦めようと思ったが、それはできなかった。

 

ここで諦めてしまったとしても、彼女には逃げ道はどこにもない。

諦めて腰を下ろした瞬間、彼女はもう家に帰り着くことは出来なくなってしまうだろう。

 

階段を下りながら、制服の下の皮膚は、いよいよ汗に濡れ始めていた。

その汗を求めるようにして、薄く広がっていた『それ』が、じわじわと活動を開始する。

細い何本もの糸のような形になった『それ』は、彼女の脇の下の中で、コショコショと皮膚を撫で回し始める。

 

「はひぃっ!?……な…なんで……くひゃっ!!」

 

先ほどまで鈍い動きだった『それ』が、今になって、いよいよ活発になって来ていることに気づいた夏美は、

階段をあと3段残して壁にもたれ、ぐっと両脇を閉じざるを得なかった。

さっきまでとは異なる、すさまじいくすぐったさ。

1本1本の糸のような物が、強く閉ざされた脇の下の中にあっても、その微かな隙間を縫うようにして、皮膚の上を滑り回っているのが分かる。

その1つ1つの細い糸の表面には、細かな突起でもあるのだろうか。

それが、皮膚にひっかかり、その度に新たなくすぐったさが広がって、彼女を精神的に追い詰めていた。

 

「かはっ!……うひゃっ!…はぅっっ!!」

 

笑わないでいることは不可能に思えた。

しかし、ここで耐えなくては、自分は間違いなく、おかしな人間だと思われてしまう。

必死に自分自身を奮い立たせて、脇の下への刺激に耐えながら、再び足を進める。

 

階段を下り終えても、一息つくことは許されない。

登下校口へ向かった彼女は、そこに立ちはだかっている最大の障害にめまいを覚えた。

 

下駄箱に入れられた夏美の靴。

しかし、彼女の靴が入っている場所は、下駄箱の上の方に位置している。

すなわち、今まで何とか、強く閉じることで防御していた脇の下を開き、靴を取らなくてはならないのだ。

些細なことではあるが、今の彼女にとっては、人類を滅亡に至らしめる可能性すらも秘めた、強く憂慮すべき事態に他ならない。

目尻から涙がこぼれそうになりながら、彼女は再び自分自身を「笑うな!」と強く戒めた。

 

ゆっくりと下駄箱に向かい、ゆっくりと腕を靴が入っている場所へ持ち上げていく。

『それ』に悟られないように。

 

しかし、無情にも脇の下で縦横無尽に動き回っていた『それ』は、突然動きやすくなったことで、その細い糸のような物を波打たせ、激しく動き始めたのだ。

 

「……ぎひゃっ!!……あひぃぃぃ!!やっ…やめへぇぇ!!」

 

思わず大きな声を出してしまうが、ぐっと口を閉じる。

大きく開いた脇の下からは、その生物が動く『クチュ、クチュ』という、水っぽい音が響いている。

激しく我慢ならない刺激に、体が何度もビクリビクリと痙攣するように跳ね上がる。

しかし、ここで、脇を閉じれば彼女は二度と腕を上げることはできなくなってしまうに違いない。

額から汗かがにじみ、制服の中では、体中から汗が噴き出してくる。

それを格好の餌の到来と思ったのか、体中に貼り付いていた『それら』が、少しずつ動きを活発にしようとしていた。

 

「……ぃぃぃ!!……ぅぃぃ!!ぁぅぅぅっ!!」

 

唇を噛んでも、喉の奥から笑い声とも叫び声ともつかない声が漏れだしてしまう。

何とか靴が入っている開き戸まで手を伸ばした彼女は、靴を取り出そうと必死に指先を動かす。

上を向くことなどできず、ただ、うつむいて、必死に笑いを抑えることしかできない状態では、靴を取り出すという作業も至難の業だ。

 

その時、突然に脇の下で動いていた『それ』に変化が起きた。

細い糸を伸ばして、脇の下を這い回っていた『それ』が、固く変質し、小さな突起のような物を伸ばし始めたのだ。

その突起は、例えるなら小さな耳かきのようで、それが脇の下の敏感な肌に次々と食い込んでいく。

 

「……ぎぃぃぃぃぃ!!…いひひひひっ!!」

 

その数は、目に見えている限りでも数十本はあるだろう。

その1つ1つの突起が、脇の下の上をゆっくりとなぞり始めた。

 

「くぁっ!!うくぅぅぅぅぅぅ!!!」

 

コリコリと皮膚の一カ所をひっかく物。

脇の窪みから、ブラジャーの紐の辺りをなぞる物。

突起の先端を出したり、引っ込めたりして、皮膚に食い込ませる物。

その動きは予想などできず、まして、それを制御することもできない。

さらに、その固い突起の間には、より細い柔らかな触手が這い回り、皮膚をプルプルと刺激して来る。

 

「はひっ!はひぃぃ!!だ……だめぇ……!!」

 

もう、我慢できないと思った。

どうすることも出来ず、ただわき起こる笑いの衝動を抑え続けることも、もう限界に達しようとしている。

万事休すかと思った、そのとき、彼女は校庭の片隅に小さな小屋があることを思い出した。

 

かつては、更衣室として使われていたが、今では備品等の道具置き場となっている小屋。

あまり人が近づかない、あの場所なら……

 

もう笑いが吹き出すのは時間の問題だった。

靴を取ろうとしていた手を下ろし、傍若無人に振る舞う『それ』を挟み込む。

 

「ひひっ……くふっ!…くははっ!……はっ……はぅっっ……!」

 

駆け出した夏美は、上履きのまま、その小屋を目指した。

走りながら、体中への刺激が少しずつ強くなって来ていることが分かる。

 

走ることで流れる汗を舐め取るようにして、脇腹の物がモニョモニョと細いウエストを揉み上げている。

背中では、沢山の突起がツンツンと刺激を送り、太ももに貼り付いている物は、全体を波打たせて攻撃している。

足の裏の物は、指の間に入り込んだり、土踏まずと靴底の間で、ブルブルと震えて絶え間ないくすぐったさを作り出していた。

 

「……もうやだぁ!!ひははっ!くひっ!」

 

小屋のドアを乱暴に開き、中に滑り込んだ彼女は、後ろ手にドアを閉める。

バンと音がして、ドアが閉まると息ができないほどの、むんとした熱気が、彼女を包み込んだ。

 

 

 

 

 

小屋の中は、校内の騒がしさから一変して、静寂に包まれている。

小さな窓にかけられた格子からは白熱した日差しが差し込み、光の中で細かなホコリが舞っていた。

1台のライン引きが倒れて、ラインパウダーがコンクリートの床に散乱している。

ぼろぼろになったマットが数枚重ねられていて、もう使われることもないのだろうか、褐色に変色し所々がひび割れた古い跳び箱が、乱雑に積まれている。

予想よりも汚くはないが、決して綺麗な場所とは言えない。

 

「ひぎぃッ!…うははっ!ちょ……ちょっと……!くはッ!!」

 

全身を襲うくすぐったさを抑えようと、夏美は制服の裾から手を入れて、動き回る『それ』を押さえ込もうとする。

しかし、手でそのドロドロとした物を掴もうとしても、指の間をすり抜けて逃げ出してしまう。

 

「くはっ……!こ…このっ!」

 

躍起になってつかみ取ろうとしても、相手は液体。

どんなに強く握っても、その僅かな隙間から流れ出してしまう。

 

「くくっ!も、もうやめてよ!ひははっ!」

 

熱気が充満する小屋の中、そこにいるだけで、体中から次々に汗が噴き出していく。

その吹き出した汗を舐め取るように、そのスライム状の物は、体のあちこちで、さらに激しく夏美の肌へ堪らない刺激を送り込んで来る。

 

「きひぃッ!!……くひひっ!」

 

制服の裾から手を抜いた彼女は、その刺激を送り込み続ける『それ』を、制服の上から押さえ付けようとする。

至る所でモニョモニョと動くそれを抑えるが、指の隙間から逃げ出したそれは、別の場所でグニュグニュと皮膚の上でダンスを踊るように蠢くのだ。

 

「ひはっ!ズルいって……ばぁっ!」

 

脇腹の物が、その形をヒトデのような形に変えて、ガシガシと肉をつまみ上げる。

 

「ひはっ!!」

 

太ももの物は、先ほどまでの動きと打って変わって、ウニのような形に姿を変えると、その細い突起でツンツンと刺激し始める。

 

「うひゃっ!!」

 

脇の下で小さな耳かきのような突起をなぞらせていた物は、その突起の数を増やしながら、その位置を少しずつ胸の脇へ移動させて来ていた。

 

「ひゃひぃ!!」

 

体中で、人外の物が容赦のない攻撃を行い、それを止める術を夏美は知らない。

しかも、ここは人があまり通わない校庭の片隅。

日頃は気丈な彼女の心も、その激しいくすぐったさと、強い孤独の中で少しずつ揺るぎ始めている。

 

「ぶふぅ!ひっ……くははっ!ちょ……本当に…やめぇッ!!」

 

グチュ、クチュ、ジュル……

 

液体が放つ音が、本格的に彼女をくすぐり始めていることを示していた。

絶え間ないくすぐりに数十分もの間さらされ続けた彼女の体は、強い疲労を感じ始めている。

まして、それが人の指ならまだしも、今まで経験したことがない刺激による物なのだから、その精神的な不快感も想像を絶するものだった。

 

「ひはっ!……はぁっ……はひぃっ!!」

 

制服の上からでも、その液体がもぞもぞと動いているのが見て取れるようになって来ていた。

全身の、制服に隠された部分だけを覆っていた『それ』は、今や、太ももから膝へ、その領域を拡大しつつある。

薄く広がった『それ』は、その薄さからは想像できないほど、柔軟に動き、敏感な肌をいたぶり続ける。

 

「きゃひぃっ!!く……くひっ…あはっ…あははっ!!」

 

右脇の下から胸の一部まで覆った、耳かき状の突起を出す『それ』が、コリコリと刺激を与え続け、それだけでも、夏美は気が狂いそうだった。

 

「かはッ……!くふふっ……くっ、くすぐったいってばぁ!!きひひひっ……!やめて……やだぁッ……!」

 

人なら、彼女の言葉を聞いて、少しでも手加減をするかもしれない。

しかし、この液体には知性はあるが、人の言葉を解するほどの知性は持っていない。

それどころか、おそらく夏美のことを「良い食料」程度にしか思っていないのかもしれない。

その証拠に、その中途半端に有した知性は、彼女を「くすぐる」ことで発汗させて、それを食料にしようとしている。

彼女にとって一番くすぐったい方法で、一番くすぐったい場所を狙う。

その、愚劣とも言える本能的な行為の中で、夏美の「笑い」への我慢は限界に達しようとしていた。

 

「……もうっ…だめぇ…!くはははっ!あははははははッ!アハッ…あははははははは!」

 

激しい笑い声が、その口から迸る。

体中を覆う悪魔の刺激から逃れようと、床のマットに転がって、全身をこすりつける。

 

「くひひひひひっ!うひはははははっ……あはははは!あはっ…ぎゃははははははは!」

 

のたうち回り、体の動かせる部分を全て使って、くすぐりから逃げだそうとする。

しかし、肌にぴっとりと貼り付いた『それ』を剥がすことなど出来るはずもない。

 

「ちょ…っ…ちょっとぉぉぉ!!ぐひひっ!タンマだってぇぇぇ!…ひひっ…ひはははははは!」

 

暴れ回ることで、スカートがめくり上がるが、そんな事に気を配っているような状態ではない。

顔を真っ赤にして、大きな口を開いて、大声で笑うことだけが、彼女に許された唯一の自由。

 

ガシャーンと大きな音がして、蹴られたライン引きが倒れ、パウダーが室内に舞い上がる。

 

「ぎひひっ…ゴホッゴホッ!ひぎゃはははっゲホッゲホッ……ぐふふ…ゴホッゴホッ!」

 

笑いながら、大量のパウダーを吸い込み咳き込む。

一つ咳が出る度に、口から涎が垂れ、その咳すらも次の笑いに飲み込まれてしまう。

 

全身の皮膚が透き通った『それ』の中で、揉みしだかれているのが分かる。

特に、彼女が敏感に反応する脇の下と脇腹にの皮膚に関しては、おびただしい数の凹みが生まれて、

その1つ1つが、激しいくすぐりを送り込む入り口になっているだろう事は明らかだった。

 

「げほっ……ははははっ!げほっ!くはははははは!ごほっ!」

 

咳は和らいでいるが、くすぐったさは一向に和らがない。

それどころか、先ほどよりも激しさを増しているようにも思えた。

 

「あひゃひひひひひッ!ちょ…ほ、ほんと死ぬってばぁぁぁははははははは!!死んじゃう…くくくっ…ホントだってぇぇえへへへへへへッ!」

 

ようやく言葉を取り戻すが、その肝心の言葉が相手に伝わらない。

膝の裏側にまで広がった『それ』が、その皮膚を優しく撫で上げる。

膝の上では、小さい凹凸がゴシゴシと引っ掻き、くすぐりを与えている。

 

「ぎゃははははははは!…こ…殺される…死ぬぅぅぅはははははははははは!!」

 

笑いが笑いを呼び、心の中で確かな恐怖が生まれ始めている。

今までの人生の中で、こんなにくすぐられた事などあるはずもない。

ひどく引きつった腹が痛み、全身をばたつかせたため、体中は汗にまみれて、シートにじんわりと染みを作っている。

目からは涙が流れ、口からは大量の涎が流れ出し、それを拭うことすら、彼女は忘れて笑い転げていた。

執拗だった。

ただ、ひたすらに、彼女に与えられる「くすぐったい」刺激。

そこには容赦や情という物は存在せず、ただ、彼女から「汗」を摂取するためだけの無機質な攻撃がある。

 

「ぎゃひゃひゃひゃっ!!助けてぇぇえはははははは!!あはははははははは!誰か助けてぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

この状況から助け出してくれたなら、その人に何をしても良いとすら思った。

誰でもいい、この状況から救い出してくれる人を、一生の英雄として崇拝する。

脳裏では、「くすぐったい」という感情と、死への恐怖が混ざり合い、苦しみと悲しみが交互に訪れている。

それなのに、体は敏感に反応し、激しい笑いが吹き上がってしまう。

心がバラバラになり、体力は限界へ一気に上り詰めて行こうとしていた。

 

「ぎゃきゃああああ!!ひひゃぁぁぁぁ!あひひひひひひひっ!くひィィ!!ひぎィィィ!!」

 

笑い声も絶叫に変わり、四肢はすでに弱々しく動き回るばかり。

流れ出した汗は制服を濡らして、ブラジャーが透けて見えている。

 

「ぐひィィィィィィ!!ひぃぎぁァぁぁァァぁぁッッッ!!ガギュィィィィィ!!!」

 

獣のような叫び声、それも少しずつ弱々しくなっていく。

確実に近づいている、体力の限界。

声は掠れ、そこには、ただ、ひたすらにくすぐったさに喘ぐ『それ』の餌に成り果てた夏美の姿があった。

 

「ギァアアアアアアッッ!!ガアァァァァァアアァァアァァッッ!!ヒギャァあアァぁアああァッッッ!!」

 

より一層大きな声で鳴き、夏美の体がビクビクビクッと2度3度と大きく痙攣する。

その後、ガクガクガクと全身が震え、腕が力なくコンクリートの床の上に崩れ落ちた。

 

「かはァっ……かひィっ…ひあッ……」

 

荒い息の中で、まだ全身をくすぐられていることを感じているのだろうか。

すでに意識のない体が、まだビクビクと反応している。

再び、夏美が目覚めた時、そこには、今と変わらないくすぐりが待ち受けている。

誰もやって来ない小屋の中で、絶望的なくすぐったさに飲み込まれて。

誰かがやって来る時まで、彼女は、ただ笑い続けなくてはならない。

 

小屋の外は、穏やかな風が吹き抜けている。

雲に隠れた日差しは、優しく芝生を撫でるように照らし、その小屋の中で繰り広げられている出来事を知る者は、誰もいない。

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