!!18歳になっていない人は見ちゃダメ!!
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「はぁ」
吐き出した白い息は、雪の中へ溶けるように消えていく。
闇の中に踊るようにして舞う雪は、私の前髪をかすめるように通り過ぎていく。
出窓に腕をもたげて、少しだけ酒が入り火照った肌に、冬の風を感じている。
音もなく、しんとした街。
時々、遠くで車のタイヤの音が響く。
静かな夜は、新たな年を待ちわびるようにして、ゆっくりと時を刻み続けている。
空は仄かに青白く染まり、街の明かりを映し出している。
手を伸ばせば届きそうなぐらいに低い、柔らかそうな雲が空一面を覆い、
雪は、その雪を隠すようにして、次々と吹き下ろされていた。
主がいない年越し。
私たちが初めて経験する、自由な年末は、少しばかり騒がしく、けれど、楽しく過ぎていこうとしている。
私は、決して賑やかな場所き嫌いではないけれど、ほんの少しだけ静けさが欲しくて、主の部屋に入っている。
1階のリビングからは、わいわいと、主の家族とカードたちの楽しそうな談笑が聞こえていた。
主がいない日々。
主と別の道を歩き始めて、もう、ずいぶんと時間が経ったような気がする。
あの日から、主の部屋は、あの日のままに。
机の中の鉛筆から、ノート1冊まで、喪失を埋め合わせるようにして、時を止めていた。
私は、時々、あの日のことを思い出す。
私たちをカードから実体化した彼女は、小さく言った。
『……私は、この世界が…穏やかな海の底に沈む、貝みたいな物だと思ってた……だから、行かなくちゃ』
弱々しく微笑んで、瞳から一筋の涙を流しながら、彼女は「ごめんね……」と一言つぶやき。
その次の瞬間には、何の魔法の感触も、まして前触れもなく、忽然と姿を消していた主。
その行き先は、クロウリードの生まれ変わりである少年にすら分からない。
ただ、私たちには分かる。
主は生きている。
主はケルベロスと共に、私たちには知ることが許されない、とても大切なことをしようとしている。
悲しむことはできるけれど、立ち止まることはできない。
私たちカードが出した答えは、あの日から、今日に至るまで変わることはない。
こうして、雪が降る空の下で、距離以上の何かに隔てられていても、
主を近くに感じていられる限り、私たちは生きて行かなくてはいけない。
「……ぐすっ」
だめだ、どうしてもお酒が入ると涙もろくなってしまう。
瞳にたまった涙を指先に受け流して、窓を閉める。
少しだけ醒めた酔いと、雪降る夜の風に軽く肩を震わせて、
一歩、窓から足を進めると、主の部屋の扉が、コトンと小さな音を立てて開いた。
「ふぁぁいっ!ファイアヒーひゃぁん!」
「…!」
バンッとドアが強く開かれて、思わずビクッと肩を震わせ後ずさってしまう。
しんとした部屋の中に、突然の賑わいだ空気が流れ込む。
「イエーイ!飲んでるひゃーい!?…ヒック」
「パ、パワー…??」
ドアの敷居枠にしなだれかかるようにして、顔を真っ赤にしたパワーが、右手で空になっているスパークリングワインの瓶を振り回していた。
左手に握られたマグカップに注がれた紫色の液体を口にしながら、満面の笑顔。
よ、酔っぱらってる……
「ウォーテーひゃん!」
「は、はいぃッ!」
ビクッと後ろで肩を震わせ、尾びれの先まで綺麗に“気をつけ”をするウォーティ。
その顔も真っ赤に染まっているが、その表情には明らかに疲労と、恐怖の色が見て取れた。
な、何があったんだろう……
「ファイアヒーひゃんは……どーして、何も飲まひゅに…ひっく……ここに一人でいるのですかぁ!?」
「は、は、は、はいぃぃッ!?」
ビクビクッと、ウォーティが何度も肩を震わせ、ますます美しい“気をつけ”をする。
その背後から、ひょっこり顔を覗かせたミラーが両手を合わせて、私に何度も頭を下げていた。
その横では、酔っているのかいないのか分からないけれど、サイレントが、そびえる大木のように二人のやりとりを見つめている。
無口で、あまり人と関わり合いを持たなそうなサイレント。
しかし、その実彼女は、とても面倒見が良いことを私は知っている。
おそらく、酩酊しているパワーとウォーティの身を案じて、付いてきてくれたのだろう。
「ウォーテーひゃん!お仕置きでひゅねぇ……あはは!ヒック……あはははは!」
「な、な、なんで私なんだよッ!?って、うぎゃぁぁ!!」
パワーはそのヘロヘロとした足取りの中で、瞬時にウォーティの頭を腕と胴体の間に抱え込み、グルンと仰向けにする。
そのまま、フローリングの床へ後頭部から叩きつけた。
ドウンッ!と鈍く重い音。
思わず手で両目を覆ってしまった私は、恐る恐る目を開く。
……そこには、大の字で寝そべったまま、顔をピクピクと引きつらせているウォーティの姿。
「パワー式ネックブリーカードロップッ(対ウォーティ仕様)」
床に膝をついてボソリとつぶやくパワー。
そのまま立ち上がった彼女は、にへらとほほ笑みを浮かべて、こちらに駆け寄ってくる。
…え?私も!?
一瞬身構えるが、パワーは私の足下へ歩み寄り、その小さな体を私の太ももへ沈めて来る。
「ファイアヒぃひゃぁん!会いひゃかったぁ!」
よ、良かった……
何かされるのではないかと警戒していた私は、ほっと胸を撫で下ろしながら視線を戻す。
ウォーティの尾びれを脇に抱えたミラーが、彼女をズルズルと引きずって部屋を出て行くところだった。
……漁港?
一瞬思ってしまった言葉など、微々としておくびに出さず、私は閉じられつつあるドアを見つめる。
ドアが閉じられる瞬間、サイレントが小さくニコッと微笑んで会釈するのを見て、思わずドキッとしてしまった。
……は、初めて見た。サイレントの笑顔。
「ファイアヒーひゃん!にゃんで飲まにゃいのでひゅひゃぁ?…ヒック」
パワー、もう何を言っているのか分からない……
耳まで真っ赤にして、もう立っていられないのだろうか、ペタリとフローリングに腰を落とす。
それでも、マグカップに残っている液体を口に注ぎ入れている。
「……もう、やめた方が」
「ひゃひほーふへふー」
「…い、いや、やめた方がいい」
……おそらく「大丈夫です」と言ったのだろうか。
その言葉は完全に呂律が回らず、明らかに酔いが回っているのが見て取れた。
「うぃ〜……ファイアヒーひゃん…ひっく……お仕置きでひゅー」
「……な、なぜ!?」
ビクッ
スクリと立ち上がるパワーに、私はとっさに身構える。
しかし、彼女の腕が、私の膝の裏をポンッと叩いただけで、私は大きくバランスを崩して、尻もちをついてしまった。
まずい、絞め技だ……
私は深夜にテレビで見るプロレス番組を思い出し、立ち上がろうとする。
主のお父さん……藤隆さんが遅くまで仕事をしている時、私は時折、夜食を作って持って行く。
エジプトの研究をしている藤隆さん。
その後ろ姿に、かすかにクロウリードの面影を感じつつ。
でも、彼とは異なる、藤隆さんの温かな背中。
振り向いて、優しくほほ笑み「いつも、ありがとう」と言ってくれる、藤隆さん。
その笑顔だけでいい、それが見れれば、私はがんばれる。
そして、夜食を作った後片付けをした後、大好きな黒ごま煎餅をかじりながら、何となく見ているプロレス番組。
……あっ。
思わず考えにふけってしまって立ち上がるタイミングを失った私。
その両足首をパワーに取られ、寝そべってしまった私は、慌てて顔を上げる。
「お仕置きでひゅねぇ…ひっく」
「や、やめ……ッ」
パワーは焦点の定まらない瞳のまま、私の両足を脇の下に挟み込む。
両手で私のふくらはぎを掴み、そのまま、彼女は右足を私の足の付け根へ押し当てて来た。
「電気ひゃんまぁぁ!」
な、なぜ電気あんま!?
そんな疑問を口にする前に、パワーの足がブルブルと震え、私の足の付け根に激しい振動が加えられる。
「…ッ…くはぁッ!?」
く、く、くすぐったい!?
ブルブルブルッと震えるパワーの足。
それを、しっかりと咥(くわ)えてしまっている、私の両太ももと……
こ、股間…にブルブルと激しい振動が伝わってくる。
「…くぁっ!!……パ、パワッうひっ!!」
ブルブルブル
激しい刺激の波が、私の太ももと股間から流れ込んでくる。
く、くすぐったい!
「ぅぅッ!…パ、パワーッ!く、く、くすぐった…ッあひィッ!?」
くすぐったい!
パワーの小さな足が、私の股間をしっかりと捉えている。
ものすごい体勢で、そのことへの恥ずかしさもあったが、それ以上に激しいくすぐったさが体全体を震わせる。
「…ひぎぃっ!…くひひっ!!パ、パッ……くヒヒッ!……うひゃっ!」
私が激しいくすぐったさに身もだえていると、パワーがニヤニヤしながら、両手をふくらはぎから離す。
両足を引き抜こうと力を込めるが、パワーは両腕に力を入れ、私の足を脇の下から離そうとしない。
「きぃぃッぐひぃぃッ!!パ、パワァ!!…くはッ!?」
「ファイアヒーひゃぁん、お仕置き、その2ぃでひゅぅ」
ふくらはぎから離した両手。
その両手を後ろ手に回して、彼女は私の足の裏へ、その指先をあてがう。
ま、まさか……
「うぎぃぃひぇははっ!!…やめ……やめてッうくぅッ!?」
「こひょこひょの刑でひゅよぉ……ひっく」
ボリッ
足の裏を爪がなぞる刺激。
「あぎぁひひひっ!ぐぎぁぁ!!…うひぃッ!くははッ!?」
く、くすぐったい!!
敏感な足の裏の真ん中辺りに爪を立てられ、私は大きくのけぞってしまう。
ボリボリボリボリ……
「あひひひひひひひ!!パ、パワァひぃぃ!!くひひひひひ!うくくっ!うくくくっ……くふふふッ…!」
股間から流れ込むくすぐったさ。
それだけでも、私には我慢できない刺激なのに。
そらに加わった、足の裏への刺激に、私は大きく体を震わせてしまう。
ボーリボーリボーリ
彼女の細い指が、足の裏の土踏まずの辺りを掻きむしっている。
くすぐったい!
くすぐったい!!
「ぎゃくくくくくくくッ!くははははははははははは!!あははははははははははは!パ、パ……くくくくくくくくくっ!」
堪らない刺激が下半身を襲い続けている。
それは、強烈なくすぐったさ。
ものすごい振動の波と、足の裏から流れ込む痛がゆい感覚。
「ふぎひひひひひひィッ!?ぐふふふふふふッ!ふひひひひ!くはははははははははッ!!あははははははははははッ!!」
何とかして体を起こそうにも、笑いで腹筋に力が入らない。
くすぐったすぎる!!
足の裏と股間への激しい刺激に、両腕をばたつかせる。
耐え難い刺激が、次から次へと流し込まれ、自分の前髪を両手で掻きむしる。
何とかして、上半身で、このくすぐったさを受け止め、どこかに逃がさなければ……
そう思うものの、そんな事ができるはずもない。
「ひへへへッ!うひゃひゃひゃッ!ぎぃひひひひ……うははっ!あはははははははッ!」
どんっどんっ!
フローリングの床を両手で叩く。
だ、誰か助けて!!
くすぐったい!!
これは、くすぐったすぎる!!
「ひははははははははははは!あひっ!?あひぃッ…くふふふっ!あははっ!あはははははははっ!あはははははははははははははっ!」
口から涎が垂れそうになり、それを手の甲で抑える。
しかし、激しい刺激に、手元すらおぼつかずに、再び両手でフローリングを叩く。
笑いすぎて、涙が流れ出し、お腹が痛くなってくる。
「ぐふふふふふっ!くひひひっ!あひぁはははははははははは!あははははははははは!あひっ!や、やめぇぇぇぇ!!やめぅぇぅぇぅぅぅ!!!」
な、なんで止めてくれないの!?
どうして、こんなにくすぐり続けるの!?
そんな思いで、パワーを滲んだ視界で見つめる。
彼女の顔は、もうフニャフニャになっていて、体はフラフラとよろめいている。
半分、眠っているのだろうか?
それでも、足の振動と、両手の動きだけは休まることを知らず動き続けている。
「ぎひひひひひひッ!うへぁぇくははははははははははっ!あひィッ…くくくっ…くははははは!あははははははは!!」
股間への刺激が少しずつ、和らいできている。
それに伴い、足の裏への意地悪な攻撃も弱まってきている。
もう少し…もう少しだ…がんばれ私。
「くははははははは!!あははははははははははは!!くくくくくッ!!うひゃひひっ!うひゃぐひぇふははははは!!」
グニュッ
「…ひぃぃッ!?」
その時、突然に股間に不思議な感覚が入り、私は背中を大きくのけ反らせた。
な、なんだろう……今の。
そう思う間もなく、再び。
グニィグニィグニィ
「ひぁははっ!くははははは!あっ…あああっ!……ぎゃふふふふッ!!…あっ!ぁぁ…あっ……あァッ!?」
股間への刺激が弱まったことで、その指先が、私の股間にゆっくりと押し当てられる。
その不思議な刺激は、私の足と足の間……
そこの真ん中辺りをグニュグニュと揉みいじめている。
「…あっ……うはッ!…あっ……くふふっ!…ぁっ……ぐひっ!…あぁ…」
な、なんだろう……この感じ。
とても熱い、とてもむず痒い、くすぐったさとは異なる、変な感じ。
そんな感覚が股間から生まれて、私の体中を巡るようにして流れ、頭の中がぼんやりとして来る。
「あっ!……くぁッ…くひィッ!……くははっ!!……んぁっ……ぁっ…ぁっ……」
おかしい、おかしいよ……
切ない。
その刺激は、私の股間……私の大切なところを、パワーの指先がかき混ぜる度に生まれてくる。
その感覚は、引くことも消えることもなく、私の中へ次々と溜まっていく。
足の裏へ送り込まれる刺激は、その、妖しい感覚と相成って、その感度をいよいよ増して流れ込んでくるみたいだった。
「ぐひひひひ!!…あッ…くぅっ…あははははははは!…あっ…ぅぁッ……くひひっ…あはははははははッ!?」
こ、これ……
気持ちいい……?
私の股間から流れ込んでくるのは、確かに快感の波。
それも、ものすごく大きい、ものすごく妖しげな快感の波。
足の裏へのくすぐったさと、快感が同時に送り込まれている。
どちらが快楽なのか、くすぐったさなのかすら分からない。
でも、すごく気持ちいい……
「ぁ…くひひっ!……んッ……あははははははははははッ!!…くぁッ!…あはははははははは!」
くすぐったさと、快楽の波。
その中で、まるで波打ち際の薄っぺらい片端の貝のように、私は翻弄され続ける。
気持ちいい……くすぐったい……
もうやめて……やめないで……
お願いだから……
「ファイアヒィひぁあ……ふええ…」
パワーの、弱々しい言葉。
その次の瞬間、突然に刺激が止み、私はハッとして顔を上げた。
えっ、なんで!?
そ、そんな……
そんな、切なく寂しい気持ちと、
終わった…!
よく耐えきった私!
と、自分を称える両方の気持ちが、心の中でドロドロと渦を巻いている。
そんな、私の葛藤も知らないのだろう。
パワーは床にフニャリとくずおれて、スースーと小さな寝息を立てていた。
「…はぁっ……はぁっ……はぁっ……んっ…」
荒い息を喉に飲み込んで、何とか落ち着かせようとする。
喉へ送った息が、ひどく熱くなっているのを感じて、自分でも驚いてしまう。
「…はぁ……はぁ……はぁ……」
まだ落ち着かない心音と呼吸のまま、私は……
ふと、自分の手を股間に触れさせる。
ぴちゃっ……
「…はぁ……ぬ、濡れてる……はぁ…」
すっかり酔いが醒めてしまっているのに、顔がカァッと赤くなるのを感じて、ガバッと飛び起きた。
笑いすぎて、激しく体中にだるさが残っている……
そして、頭の中で未だにモヤモヤとした何かが、輪郭のはっきりしない形を作りながら渦巻いているのが、はっきりと感じられた。
パワーの体を両腕で抱え、そっと持ち上げる。
若干、汗ばんだ肌と、熱くなった体を、主のベッドの上へ置いてあげる。
「ふぇぇ……ファイアヒィひゃぁん」
ムニャムニャと寝言を言うパワーの顔を見つめながら、私はふと思う。
……ウォーティとミラーが、よく、くすぐりっこをしているけれど。
ずっと、私は子供っぽいと思っていたけれど……
こ、今度…混ぜてもらおうかな……
夜はまだ深くもなく、しかし、決して浅くもなく。
1階からは、相変わらず、楽しそうな談笑が響いている。
ようやく、落ち着き始めた体を奮わせて、私は再び飲み直そうと、パワーを起こさないように、そっと主の部屋を後にした。